クリッピング回路の種類について (更新) - MOD(改造)

クリッピング回路の種類について (更新)

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今日はクリッピング回路の種類についてご紹介します。まず下記のマトリックスを見てください。いやぁー色んなクリッピングがありますね。

↓をクリックすると拡大できます。
clipping-mode.jpg
(あくまでも私個人で調査した結果なので間違いがあるかもしれません。もし間違いがありましたらご指摘頂ければ幸いです。)

でも、クリッピング(ダイオードを用いて増幅した信号をクリップさせる)って何?という人はこの最後に詳しくに説明していますのでそちらを見てください※。

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基本的には、下記の観点から分類ができますね。(分かりやすく説明するためあくまで一般論であって細かな点は各々のエフェクターや回路設計で異なることはあると思います。一般的にはハイパスフィルター ->増幅器 + トーンコントロール -> クリッピング -> ローパスフィルターで音が決まりますので。)

①Distortion系クリッピングか、Overdrive系クリッピングか
clipping-circuit.jpg

Distortion系クリッピングは一般的に歪が深く輪郭もはっきりしたシャープなものが多く、Overdrive系クリッピングは一般的に歪が浅く輪郭が柔らかいもののブースト感が多く得られます。

②対称系か非対称系か(同じ種類のdiodeが単に逆向きにある対称系か、片側のdiodeの個数、または種類が違う非対称系か)
clipping-circuit2.jpg

非対称系は正確には非対称な信号の振幅を形成する手法で、片側のdiodeの個数、または種類が違うと非対称になってしまうためこれに属します。一方、同じ種類のdiodeが単に逆向きにある場合にはどちらとも同じ振幅にしかクリッピングされませんので対称に属します。一般的に非対称系はより多くのボリューム、ハーモニクスとクランチが得られ、対称系はよりスムーズなドライブが得られると言われています。BOSSは非対称系、Ibanezは対称系と思っていれば分かりやすいかもしれません(正確には違いますが)。

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③diodeの種類(diodeの種類がシリコンか、ゲルマニウムか、LEDか)
ファズに代表されるゲルマニウムは低い電圧でクリップされるため、より歪みが強く、耳に痛い成分が含まれるようにその歪みは攻撃的なイメージ、シリコンはより高い電圧でクリップされるため出力が高く、また明るめの歪みのイメージ、LEDはマーシャルのガバナーが最初にクリッピングとして用いたとされるように、マーシャル風の厚みのある歪みのイメージと私は思っています。ただ色々な組み合わせや種類により傾向がことなりますのであくまで感覚的なものです。例えば同じゲルマニウムの1N34aと1n60でも後者の方が明るめで輪郭のはっきりとした感じだと思います。

以上から、オーバードライブはやはりシリコン、非対称系が多いような感じですかね。もう一度表を見てもらいましても、例えばブティック系からBOSS、Ibanezに至るまで広くシリコンダイオードが用いられており、歪みのスムーズさを売りにしているもの以外はOD-1の影響があるのか非対称系が多いように思います。

珍しいところですとやはりブティック系になるようで、ショットキーダイオード(代用が同じようなクリッピン電圧のゲルマ)はZen Drive(厳密にはショットキーダイオードとnMOSのシリアル接続)、LEDはClay Jonesという感じですかね。Landgraff等はセレクトSWにてこのどのモードでも選択できる使い勝手のよい(好み勝手の良い)エフェクターを提供しています。

一方、ディストーションで言うと、オーバードライブとは状況が異なりスムーズさを優先して追加したいのか、はたまたMXR Distortion+の影響からか対称系が採用され、ビンテージのdistortion+がゲルマ、ガバナーがLEDを使う以外はやはりシリコンという感じになっています。(これも厳密には、初期のMXR Distortion+のクリッピングはGeダイオードの非対称であり、その後採用したSiダイオードの非対称はことなる

やはり、ゲルマは今は製造されることも少なく供給能力が商業的に見て不安なのと、出力が高く、明るい歪みはやはり現代では分かりやすいのかで、シリコンが多くなっているのでしょうか?またオーバードライブはTS系(対称系)のファン以外はほぼ非対称系、ディストーションは対称系でしょうか?

こうやって見ていくと、色々なディストーション、オーバードライブでも自分の好みが探せるかもしれませんね。またもう少し音の質という観点からは過去のブログのこちらや、こちらも見てみてください。

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※クリッピング(ダイオードを用いて増幅した信号をクリップさせる)って何?

まずクリッピングを説明するために歪む原理を簡単に説明します。真空管アンプは出力を上げると歪み始めますがそれは次のように説明できます。

通常、増幅は左図のように入力信号波形を増幅し、同じような形状の出力信号波形として出力しています。この場合には歪むことはなくただ単に入力信号の音量をより大きくするだけになります。

しかし、右図のように入力が大きくなってきたり、高い出力領域のように増幅が飽和する領域では出力の波形は段々と上側の波形は増幅の飽和が原因となり鈍ってきます。

これがいわゆる歪みで、入力信号波形が歪んだ形となっていますし、これを音として聞くとやはり歪んだ音として聞こえます。これが歪みの原理です。

distortion.jpg

一般に波形が矩形になるほど歪みが発生しますので、アンプはある意味潰れて矩形波を出力している状態になっているので、これがアンプが歪む原理になります。

とすると、逆に考えるとこの増幅の飽和が起こるため歪が生じるんだから、それと似たようなことをエフェクターのオペアンプ等で再現すれば歪が生じることになります。この飽和状況はある意味幾ら出力を(=出力の電圧を)上げようとしても上がらない状態ですので、ダイオードを使えばある一定以上の電圧になることを防ぐ(=ある一定以上の電圧では余分な電圧を漏らして電圧が上がらないようにする)性質がありますのでこれが使えるわけです。これをクリッピングといいます。

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