現在市場にある23種類の12AX7に対するトーン特性の包括的な比較チャート

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さ~て、今日はこちらの記事「真空管の旅: パワー真空管とそのシグネチャー・サウンドに関するガイド4 ~パワー管を交換することの喜び編~」でご紹介した今日現在市場にある23種類の12AX7に対するトーン特性の包括的な比較チャートを解説です。恐らく日本初公開の必見情報だと自負しています。

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[現在あるプリアンプ管12AX7の包括的な比較チャート]
ちなみに本比較チャートは、米国アリゾナ州のテンペ(Tempe)を拠点とするAmplified Partsのセールスエンジニアである Kurt Prange(BSEE)氏によります。

Kurt氏はGibsonアンプ「Kalamazoo」発祥の地であるミシガン州Kalamazooで9歳よりギターを始め、現在は妥協ないトーン追求のためギター自作や真空管アンプ設計をミュージシャンの協力を得ながら行っているそうです。

さあ、ここからは比較チャートの見方ですが、その前に通常どのプリアンプ管も下記のように種類によって増幅率(amplification factor: μ)は基本同じ増幅率になっています。そしてプリアンプ管12AX7は最も高い増幅率の100になり、高増幅(high-mu)と呼ばれる規格の真空管になっています。

規格:  12AU7 < 12AV7 < 12AY7 < 12AT7 < 5751 < 12AX7
増幅率:  20 < 30 < 40 < 60 < 70 < 100

なので基本同じ回路である限りは理想的には同じ増幅率で全く違いはないはずですが、実際には設計・製造する過程で大なり小なりの違いがあるのですから、かなり増幅率が異なってきます。そのためこの比較チャートが作られたんですね。


グラフの見方
  • このグラフは異なる真空管ブランドからサンプル数を同じにして取得した、平均的なゲインとノイズに基づいています。ですから、各ブランドの全ての12AX7がこのグラフト同じことまでは保証していません。

  • ゲインの数値は、例えば数値「10」は10倍増幅されるといった絶対的な値や意味はなく、相対的な値になっています。

  • ノイズの値も相対的な値になっていて、ノイズが小さいほど数字も小さいくなり1-4の4段階で評価

例として、高ゲインのものを5つ挙げましたが、これは単にゲインが高いものがよいという評価ではなく、狙いに合ったゲイン、低域・中域・高域のバランス、ノイズ加減のチョイスの際に参考となるリファレンスだと感じます。完全版は下記の続きを読むで全23種類に対する完全チャートがあります。

増幅率の相対比較 高ゲインな5つ

製品名(モデル名) ゲインの相対値(1-10) 真空管の構造
(ガラス管の直径)
ノイズ
1 T-12AX7-MUL 総合 10
Low 10
Mid 10
High 10

(0.870-0.878")
3
2 T-12AX7-TUNG 総合 8.3
Low 9
Mid 8
High 8

(0.870-0.882")
1
3 T-ECC803-GLD-JJ 総合 8.3
Low 8
Mid 9
High 8

(0.840-0.850")
3
4 T-7025-CHINA 総合 8.3
Low 9
Mid 9
High 7

(0.856-0.875")
4
5 T-12AX7WB-SOVT 総合 8
Low 9
Mid 8
High 7

(0.869-0.877")
3
6 T-12AX7-GLD-JJ 総合 7.7
Low 7
Mid 8
High 8

(0.840-0.853")
3
7 T-12AX7EH 総合 7.7
Low 7
Mid 8
High 8

(0.870-0.878")
2
8 T-5751-JJ 総合 7.3
Low 7
Mid 8
High 7

(0.843-0.854")
1

ちなみに、下記にパワー管は用いないプリアンプ管だけで作られた超小型アンプを揃えてみました。今後も、この超小型アンプ見つかればどんどん追加して更新していきます。

1本のプリ管12AX7は2つの独立した真空管増幅回路でできているため、基本的には1本のプリ管12AX7の各真空管増幅回路を交互にプッシュプルに動作させてパワー部を形成しているようです。

製品名(メーカー) 出力 チャンネル数 プリアンプ部 パワーアンプ部 値段
Firefly (AX84.com)
1.5W 2ch 2x 12AX7 1x 12AU7 約$200
Lil' Night Train (VOX)

2W 1ch 2x 12AX7 1x 12AU7 1.7万円
(推定)
HT-1HR (Blackstar)
1W 2ch 1x ECC83 1x ECC82 2.5万円
(推定)
HT-5H (Blackstar)
5W 2ch 1x ECC83 1x 12BH7 4万円



[現在あるプリアンプ管12AX7の包括的な比較チャート(完全版)]

Kurt Prange氏によるプリアンプ管12AX7の現行品比較

プリアンプ管12AX7の歴史は、1940年代後半にRCA(Radio Corporation of America)とSylvaniaは最初に導入した時から始まり、今ではギターアンプで最も一般的に使われているプリアンプ管となっていまして、巷には選ぶにも多すぎる位に供給がされています。

この比較の目的は、ギタリストのニーズに応じて現在市場にある12AX7からベストなものを見つけるためのリファレンス資料となることを狙っています。

また、12AX7の直接の代替品であるECC83、ECC803、7025、5751も含めて比較している点も工夫しています。(本ブログ筆者の個人的なコメント: 恐らく日本も含め世界でもほとんど他にはない位の貴重な情報となっていると思います。)


12AX7の基本

プリアンプ管12AX7は9ピン ミニチュアで、ハイ・ミューなツイン3極管(triode)といきなり言われてもあれですから、そこから解説します。詳しい人は飛ばしてください。(笑)

  • 9ピン ミニチュア: これは真空管を差し込むときのソケットの規格
    ピン1とピン9の間が離れていて、これで差し込む向きが必ず1方向になることを意味しています

  • ハイ・ミュー(high-mu): これは12AX7の増幅率がプリアンプ管の中では最も大きな100となっていることから
    既に説明したように最も高い増幅率を持つため、増幅率の記号であるギリシャ文字のμ(ミュー)が高いという意味でハイ・ミュー(高増幅率 high-mu)と呼ばれています(ちなみに、増幅率が中程度の12AU7はミディアム・ミューと呼ばれることがあります)

  • ツイン3極管: 独立して同じ2つの3極管が1つの真空管の中にある構造
    3極管というのは、プレート、グリッド、陰極(カソード)からなる最も基本的な真空管の構造になっている

ゲインテスト条件

各プリアンプ管のサンプルを同じ(Fender Black Faceスタイルの)下記のプリアンプ回路を使用し、バス(BASS)とテレブル(TREBLE)は共に最大(MAX)でテストを行いました。オシレーター(周波数ジェネレーター)により電圧のゲインを測定し、下記の周波数帯域で周波数レスポンスをプロットしていった。

10Hz ~ 18kHz


下記に示す周波数特性から、3つの特徴的な周波数(50Hz、400Hz、4kHz)があることがわかったので、この3つの周波数帯域で低域(low)、中域(mid)、高域(high)での電圧のゲインを同じサンプル数分測定した。そしてサンプルの平均を算出し、この平均値に対して比較を行った。


低域のゲインの平均が最も小さな真空管をゲイン"1"のリファレンスとし、。低域のゲインの平均が最も大きな真空管をゲイン"10"のリファレンスとしている。同じように、中域、高域に対しても同じ考え方でゲイン"1"とゲイン"10"のリファレンスを設定した。

ノイズテスト条件

各プリアンプ管のサンプルを既に説明した同じ(Fender Black Faceスタイルの)プリアンプ回路を使用し、オシレーターを出力に繋いだ状態で真空管のガラス管をタッピングして発生する電圧スパイクの振幅をモニタして得た。そしてサンプルの平均を算出し、この平均値に対して比較を行った。

試演テスト条件

特別に12AX7スイッチボックスを今回作り、MarshallアンプのJCM800 2203のV1ソケtットにこのボックスを繋ぎ、一度に6つのプリアンプ管を切り替えて比較を行った。そしてアンプ側の出力トランスファがオーバーヒートしないように、6つのプリアンプ管を同時に比較できるよう独立したフィラメントトランスファーで各々のプリアンプ管を温めて行った。

さらに、シールドケーブルもV1ソケットに繋げるため今回作成し、スイッチングボックス内で各プリアンプ管のピン1,2,3,6,7,8を1つのソケットに繋げるようにした。試演テストはギターを弾きながら、色々なアンプ設定で切り替えを行い各プリアンプ管の特徴が分かるまで行った。


製品名(モデル名) ゲインの相対値(1-10) 真空管の構造
(ガラス管の直径)
ノイズ
1 T-12AX7-MUL 総合 10
Low 10
Mid 10
High 10

(0.870-0.878")
3
2 T-12AX7-TUNG 総合 8.3
Low 9
Mid 8
High 8

(0.870-0.882")
1
3 T-ECC803-GLD-JJ 総合 8.3
Low 8
Mid 9
High 8

(0.840-0.850")
3
4 T-7025-CHINA 総合 8.3
Low 9
Mid 9
High 7

(0.856-0.875")
4
5 T-12AX7WB-SOVT 総合 8
Low 9
Mid 8
High 7

(0.869-0.877")
3
6 T-12AX7-GLD-JJ 総合 7.7
Low 7
Mid 8
High 8

(0.840-0.853")
3
7 T-12AX7EH 総合 7.7
Low 7
Mid 8
High 8

(0.870-0.878")
2
8 T-5751-JJ 総合 7.3
Low 7
Mid 8
High 7

(0.843-0.854")
1
9 T-ECC803-S-JJ 総合 6.3
Low 5
Mid 7
High 7

(0.842-0.854")
2
10 T-12AX7S-MG-JJ 総合 5.7
Low 5
Mid 6
High 6

(0.843-0.854")
3
11 T-ECC83WA-TAD 総合 5.7
Low 7
Mid 6
High4

(0.859-0.872")
3
12 T-12AX7LPS-SOVT 総合 5.7
Low5
Mid 6
High 6

(0.871-0.879")
3
13 T-12AX7-PS-TAD 総合 5.7
Low5
Mid 6
High 6

(0.851-0.867")
2
14 T-12AX7A-C5 総合 5.7
Low5
Mid 6
High 6

(0.858-0.879")
2
15 T-12AX7B-CHINA 総合 5.7
Low5
Mid 6
High 6

(0.857-0.869")
3
16 T-12AX7VKA 総合 5.3
Low6
Mid 6
High 4

(0.879-0.883")
2
17 T-5751-SOVT 総合 5.3
Low4
Mid 6
High 6

(0.870-0.873")
3
18 T-7025WA-TAD 総合 5
Low6
Mid 5
High 4

(0.849-0.873")
2
19 T-12AX7-C-GT 総合 4.7
Low 4
Mid 5
High 5

(0.855-0.866")
3
20 T-12AX7-CHINA 総合 4.7
Low 4
Mid 5
High 5

(0.862-0.873")
3
21 T-12AX7-A 総合 4
Low 4
Mid 4
High 4

(0.809-0.814")
3
22 T-12AX7-S-JJ 総合 2.7
Low 2
Mid 3
High 3

(0.840-0.853")
3
23 T-12AX7WA-SOVT 総合 1
Low 1
Mid
High

(0.870-0.876")
3


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